見つめ返す旅の末。

劇団わたあめ工場
#15「Woo」
2019年10月12日(土)〜20日(日)
@プーク人形劇場

無事終演致しました!


台風19号の影響により、初日ステージと次の日のお昼ステージを中止とし、文字通り嵐のような幕開けでスタートした「Woo」。しかし、沢山の方々の暖かい応援とご支援により、お客様を含め、キャスト一同怪我なく最後まで駆け抜けることが出来ました。
それだけでなく、2ステージの追加公演により、予定通りの13ステージの上演。
関わって下さったすべての皆様、誠にありがとうございました。
毎作品、終演後にこうして作演出のわたくし小野寺からの答え合わせブログのようなものをやらせて頂いておりますが、今作品は何よりもまず、感謝の気持ちを伝えたくてなりませんでした。愛にあふれた作品を書き、その作品自体も愛してもらえた事を大変うれしく思っております。



本題の答え合わせですが…
この公演から物販にてパンフレットや特典脚本の後書きなんかもやらせて頂いております関係で、書くことをそれぞれ変えたいななんて思っておりました。
お話に対してかけた思いや、大オチのひも解きに関しては脚本で。

それぞれの用語解説はパンフレットにのさせて頂きました。まだ買ったけど読んでないって方はぜひそちらをご覧ください。
そして今回購入してないよ〜って方は今後の作品でぜひご検討下さい。(ダイマ)

損はさせませんよ??



さて、やらしい宣伝は置いといて、このブログではどこにも書いていない事を乗せていこうと思います。
今作ではアンナの周りのメンバー以外に沢山のマヨエビトが登場致しました。
強烈なキャラクターの子達でしたが、謎に満ちたメンバーばかりだったことでしょう。
そんなマヨエビトたちの設定を一部だけご紹介いたします。



ゴミ山に住むマヨエビト
「ウェスト」

生まれてすぐ、吹雪の夜に母に捨てられた女の子。そのせいなのか、物心がついてから、人が捨てたものを拾う癖がつく。孤児院で育ち先生たちに否定され一度は直すものの、心の奥では何故いけない事なのかがわからなかった。
大人になり、廃品回収された鉄くずの山を見て、たががはずれる。
周りに何をどう思われようとも、自らの掲げた「不用品の美学」を貫いた。
だが、生前のウェストは迷惑な住人として避けられ、孤独の毎日を過ごしていた。
「誰が捨てたものを拾う、それは新しい命を吹き込むのと同等」この台詞はウェストが自分自身にかけている言葉でもあり、願望でもあった。
死因は作中でも出てきたように、バネが、集めたコレクションの山にひっかかり崩れてきた鉄くずの下敷きとなり圧迫死である。



見世物小屋の支配人
「ルラー」

支配欲の塊であるルラー。彼がいつどこで死に、マヨエビトとなったのかは謎である。
がしかし、少なくともここ数年の話ではない。誰かを支配することでしか自分を現すことのできないルラー、また喜びを感じることが出来るのも支配でのみである。
だが、決して苦しむ顔が見たくて縛り付けている訳ではない。その人の望むものを与え、必要とされる状況を作り出すことで相手を支配している。
見世物小屋にいる住人はかつて全員旅人だったものたち。旅の最中にルラーに引きずり込まれマヨエビトとなってしまった。



見世物小屋の看板
「ドール」

ルラーが最初に引き込んだ旅人。生前もダンサーであった。体の故障で踊ることが困難となり、大好きなバレエを捨てる人生を歩むこととなる。生きがいを捨てた生前のドールは、何かを考えようとすると踊りたいという意思が自分の中で沸いてしまった。
苦しみから逃れるために、何も考えない屍のように生きることを選択し、物静かに暮らした。彼女の死は、不意に訪れた事故。周りは不慮の事故と嘆き悲しんだが、ドール本人は思うように動かせなかった自分の体と決別し、自由に動きまわれる幽世の世界に喜びを感じた。
そんな中で煌びやかな見世物小屋と支配人ルラーと出会い、「新しい自分」になることよりもドールにとっての「本当の自分」としてここに残ることを決めた。
見世物小屋のラストシーンでは、ドールだけがストライキに参加せず、一人ぼっちになったルラーに優しく手を差し伸べている。これはドールが自分の事を認めてくれている支配人に対する心からの感謝であり、他の人はどうであれ、ドールを地獄のような苦しみから救ってくれた支配人とこれからも共に歩むという現れである。



見世物小屋で一番盛り上がるグループ
「トゥインクル☆バニッシュ」

かつて日本で国民的アイドルとして、一世を風靡した人気アイドルグループ。子供から大人まで老若男女問わず曲を口ずさむような人気ぶりであった。
そんな中、グループの周年ライブ、日本初となる特設野外ステージでその事件は起こった。その日は少し風が強く、ライブ中止の声も上がったが、お客様で超満員の会場を見て、メンバーはその思いに応えるべく、ライブを決行する。
会場は大盛り上がり、お客様とメンバーが一つとなり大成功で幕を下ろすはずだったライブのクライマックス、最後にと選んだ曲はグループが人気となるきっかけを与えてくれた思い入れのある歌だった。その歌が最も盛り上がる部分へと差し掛かったとき、ステージ頭上より落ちてきたスポットライトに潰され命を落とす5人。綺麗な星型のフォーメーションで踊っていた5人は即死であった。
作中で登場するグループ名“トゥインクル☆バニッシュ”はルラーが名付けたもの。
もとのグループ名は別にあるが、それを5人は思い出すことが出来なくなってしまった。
旅人は本来1人で振り返りをするが、5人は5人で同じ列車にのり見つめ返す旅に出たのだった。「5人でまだステージに立っていたい。」彼女たちの原動力、そして死を受け入れられない理由のひとつである。



トゥインクル☆バニッシュのマネージャー兼プロデューサー

「キャッシュ」

お金にとにかく執着をしている男。彼の存在がマヨエビトであるのかも謎である。
生前からお金を稼ぐ為ならば、どんな汚い事もやってのけた男。
様々な商売で荒稼ぎするものの、一向に満たされない欲望を抱えていた。死後、幽世に来てからもその欲求を抑えることが出来ず、そもそも振り返ることをせず、列車にものっていない。お金の匂いをかぎ分けながら、彷徨っていた所見世物小屋を見つけ住み着く。
ルラーは許可を出していないし、引き込んだわけでもないのに、自らでトゥインクルバニッシュのマネージャー兼プロデューサー&ディレクションを担当と言っている。
ルラーが制御不能の数少ないマヨエビト。



見世物小屋の美しい花
「ブロッサム」

生前、美しさに執着しすぎたせいで、整形手術を繰り返し、アナフィラキシーショックにより命を落とした。まだ医療技術も今ほど発達していなかった時代、リスクも高く、費用も高かったが、他の全てを犠牲にし、死ぬまで美しくなることに固執した男であった。
幼き頃、母親から不細工と言われ、自らの見た目に劣等感を覚えていた。誰からも愛されず、孤独を感じていた彼の答えは「自分が美しくないから」そんな時出会ったのが整形手術であった。少しの間眠り、次に目を覚ますと別人になっている。そのまるで魔法のような魅力に憑りつかれてしまったのだ。そんな彼は死後、列車内で窓に写り込んだ自らの顔に驚く。
そこには手術のし過ぎにより、腫れあがった頬・爛れた瞼や唇。美しさの欠片もない顔がうつっていたのだ。嘆き苦しみ、窓から距離をとり蹲っていると列車が初めの停車駅へと到着する。そこは見世物小屋。煌びやかな世界が広がり、彼の大好きな美しい世界が広がっていた。見とれていると、そこへ支配人がやってきて囁いた。
「貴方は何になりたいですか?」彼は心からの想いを告げる。「お花。誰からも愛されるような世界で一番美しい花になりたい。」花は咲くだけで愛を得ることができる、そう考えた彼はブロッサムとしてマヨエビトとなり見世物小屋の住人となりました。



見世物小屋の床下に住む
「シーク」

運命の人だと信じていた元恋人のストーカーだった生前のシーク。愛のカタチが歪んでしまった彼女に元恋人は困り果てていた。何度も優しく断ったものの、執拗に離れようせず、その行動は次第にエスカレートしていった。郵便受けの中にある支払い用紙をすべて回収し、勝手に払っておいたり、ごみの分別がきちんとされているかのチェックをしたりしていた。そんな中、思いも寄らない出来事が生前の彼女を襲う。元恋人の結婚。そして、子供まで授かっていた。その事実を知り、彼女は奇妙な行動にでた。生まれたばかりの赤ん坊を誘拐したのだ。その理由は生まれてくるべき場所に連れ戻す為、彼と自分の運命を信じ、赤子もまた本来は自らが授かり産むはずであったと思い込んでいた。
彼は自分と、この赤子の元に帰ってくると信じ、掘立小屋のような場所で息をひそめるようにして待ち続けた彼女。しかし、待てど暮せど彼は帰ってこず、当然赤子を育てた事のない彼女は、泣き止ませるつもりで口に詰めたハンカチで、愛する人との繋がりであったその赤子を窒息死させてしまう。動かなくなり、どんどん固く、黒く、腐り始めた赤子を背中にずっと背負い、彼女もまた心が病みそのまま餓死してしまう。
死後、幽世へと降り立った彼女は生前と変わらず彼を待つための場所を探しまわった。
そうして居ついたのが、見世物小屋の床下。尚、見世物小屋の住人は床下にシークがいることを認識していない。




海の中に住む
「マリーン」

死因は海へ身をなげ、自殺。生前、生まれ故郷の島から都会へと引っ越したマリーンは友達が出来ず悩んでいた。言葉の違いや価値観の違いで、仲間に入れて貰えなかった彼女はだんだんこの場所に居ることに疲れてしまう。友達を作ろうと、歩み寄ろうと努力をしても、「変だから友達にはなれない。」と拒否されてしまった。
そんな現状に耐え切れなくなった生前のマリーンは大好きな海に身を投げ、死んでしまう。
苦しい世に生きるよりも、楽な死を選んだのであった。
振り返りの旅でも同じように、自らを振り返ることに耐えられなかったマリーン。
自分の理想の海を作りだし、そこでマヨエビトとして住んでいる。
ちなみにアンナ以外にも列車が停車しているが、友達になってくれた旅人はいない。
アンナが唯一マリーンに対して「友達だ」と受け入れてくれた旅人であった。




「マヨエビト」
それは現世に強い未練を残した者や、今の自分に強く固執するもの、そして自らの死を受け入れられない者の成れの果て。

Wooの世界には、上記では紹介しきれていないマヨエビト達が登場しています。
ぜひ物語を思い返しながら、彼や彼女たちの事を考えてみてください。
そうすることで、それらのマヨエビト達は昇華されていくのです。
今の貴方は死後、どんな旅人になりますか?
マヨエビトとならず、新しい自分を授かることが出来ますか??
Wooで描いた死後の世界、それは「今」でもあるのです。
今をしっかりと見つめなおす機会に早いも遅いもありません。
貴方なりの旅が、幸多からんことを。

作・演出 小野寺真美

0コメント

  • 1000 / 1000