月に唄えば....
劇団わたあめ工場♯13『Syng til måne』
10月13日(土)~21日(日)までの約一週間、全12ステージ。
無事に終演致しました。
ご来場頂き、誠にありがとうございます!!
沢山の方にご覧頂き、作品に触れて、そして様々な形で愛してもらった作品でした。
毎公演思うことでは御座いますが、この日、同じ時を過ごす喜び。お客様に観て頂き、物語から何かを受け取って頂く尊さ。
『これは決して当たり前ではない』
ということ。
しかし、そんな当たり前ではない事が
現実に、さも当たり前のように訪れる。
まさに夢のような日々でした。
私たち作り手側からお客様に送る『ありがとうございます』の言葉には、たくさんの思いが込められているのでしょう。
もっと他に伝えたい言葉がアレコレ出てくるのかもしれませんが、ぎゅぎゅぎゅっと集約すると『ありがとうございます』の一言。
なので、普段カーテンコールでは言葉を発さないわたあめ工場ですが、千秋楽だけは決まって、終演後の挨拶をさせていただきます。
大きな声で皆様に感謝を届けるために。
さて。
わたくし小野寺の終演ブログは作者として、主宰として一つの区切りをつけるため。
この『区切り』という形になるべく、その都度、物語の種明かしをしている訳ですが、、『Syng til måne』という作品は過去のわたあめ作品の中では類を見ないほど完結してしまっている為、あとはお客様のご想像にお任せしたい次第ですが、少しだけ根本のお話を。
まずはタイトルのおはなし。
「Syng til måne」日本語になおすと
「月に唄う」とか「月に捧げる唄」
この「月に唄う」というタイトルには、
そのままの意味ともう一つ「妹に捧げる唄」という裏の意味もあります。
ソールのソニアとマーニのトビアスの間に生まれた一人目の子供。
その子はマーニに選ばれました。
父は息子が母と離れ、寂しくないように…
ソールの魂を忘れぬように、太陽の意味を持つ「ソラ」と名付けました。
そして、二人目の子供はソールに選ばれ、
同じく父と離れ、寂しくないように…
月の意味を持つ「モネ」と名付けました。
作中でも描かれていましたが、お兄ちゃんであるソラは妹のモネを寝かしつける為に、よく枕元で唄を歌っていました。
モネにとってはその兄が歌ってくれる唄が
「幸せ」の象徴であったと言えます。
次に、この物語に登場する『マーニ』『ソール』『スケルティティ』の3部族。
スケルティティは脅威と恐れられ、『マーニ』も『ソール』も、敵はスケルティティのみと言い伝えられて来ました。
しかし、決してスケルティティのみが害を成せる(傷つける)ことが出来る訳ではなく、マーニがソールを殺そうと思えば出来るし、逆もまた然り。ただ、昼と夜の守り人同士が争いを始めてしまうと昼と夜の均衡が保たれなくなります。
そこで、昼と夜が共通して敵と定める存在「狼」を作ることで争いを避けたのです。
「スケルティティ」はマーニとソールから闇そのものと言い伝えられています。
「光を飲み込む闇そのもの」
「闇が獣となり襲ってくる」
言い伝えを信じたマーニとソールは狼を煙のような存在だと思い込んでいます。
でも実際は、獣の皮を被った同じ人なのです。怪物だと伝え聞いていた存在が自分たちと変わらない「人」であることを知ったソラは心を通わせ、言葉を交わしたのでしょう。
主人公の「ソラ」が未熟な少年であったからこそ、言い伝えに縛られる事もなく、順応出来たのです。
マーニとソールの敵「スケルティティ」
彼らの正体は「影」光が生み出した者達。
この部族の仕事は昼と夜のバランスを保つこと。どちらか一方の部族が増え過ぎないように定期的に集落を襲いに向かう。
これも先代からの言い伝えによって決められた事。それを信じ、自分たちは崇高な部族として誇り、世界の均衡を保ったのです。
今回のフライヤーは3種類。
この3種類にかくされた細工はこの3部族の関係性でございました。このフライヤーのイラストをそれぞれ重なるように並べると1つのマークが出来上がります。
このマークは今回の世界の根本を表した物となり、これを見ながらそれぞれのフライヤーのサイドに書かれた文字を読むと、3つの部族が其々依存し合っていること。スケルティティが月と太陽の光からなる「影」である事が紐解けるようになっております。
この物語の重要なキーワードとなる「秘密」を紐解けた人は一体何人いたのでしょうか?
この「光」と「影」そして、「天秤」このキーワードを頭に置きながら物語を見ると、実はまた少し変わった視点で見る事が出来ます。
華やかな歌とダンスで織り成す作品の裏にはこんな事が隠されておりました。
表と裏。今回はそこに意識を持っていき、作品作りに挑みました。
このブログを読んで…もう一度ちゃんと見たかった!!と思われた方いたら…是非!DVDを買って見る際に、様々な「表と裏」に注目してみて下さいねっっ!!!(急な宣伝)
それでは、長々ブログにお付き合い頂き、有難うございました!
「歪な家族」が求めた「平凡な幸せ」の先に待っていた残酷な運命。
皆様の心に「Syng til måne」の世界が残りますように。作者より月に願いを込めて。
劇団わたあめ工場
主宰 作・演出/小野寺真美
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